戸籍から消えた123歳の女性 ―「高齢者消除」という静かな制度

生年月日 明治32年11月30日

そして、その少し下には、高齢者消除の許可日 令和4年11月8日という文字。

明治32年生まれ。もし生存していれば123歳になります。もちろん、本当に123歳まで生きていたわけではありません。

この方は、亡くなられた後も死亡届が提出されず、戸籍上だけ長い年月を生き続けていたのです。

戸籍は、届出がなければ「死亡」を知ることができない

戸籍への記載について、出生届が提出されれば「出生」が記録され、死亡届が提出されれば「死亡」が記録されます。

逆に言えば、死亡届が提出されなければ、現実には何年も前に亡くなっていても、戸籍の上では生存したままになってしまうことがあるのです。

消えた高齢者問題

平成22年頃、「100歳を超える高齢者が所在不明」というニュースが大きく報じられました。高齢者が戸籍や住民票などの公的記録上は存在しているにもかかわらず、実際には生死または実居住地など確認が取れなくなっている例が多数存在していることが明らかになりました。

このようなケースで、行政側が必要に応じて調査を行い、市区町村長が監督法務局長の許可を得たうえで、職権で抹消するのが「高齢者消除」という運用です。

「死亡」ではなく「消除」

この制度で印象的なのは、戸籍には「死亡」とは記載されないことです。なぜなら、死亡の日時や事実が確認できたわけではないからです。だから戸籍には、高齢者消除と記録されます。

戸籍上「消除」された方にも確かに人生がありました。家族がいて、戸籍が作られ、地域で暮らし、誰かと関わりながら人生を歩まれたはずです。にもかかわらず、その人生の最後が「死亡」ではなく「高齢者消除」という四文字で記録されることに、少し複雑な気持ちになります。

高齢者消除は単なる戸籍上の整理であって、高齢者消除によって「死亡」の効果が生じるわけではありません。高齢者消除の記載によって相続の開始を認定することはできないとされています。

高齢者消除の対象者の方の相続手続を進めるためには、死亡届を提出して死亡の旨を戸籍に記載してもらうか、失踪宣告により死亡したものとみなされる旨を戸籍に記載してもらってからでなければ、相続手続を進めることは難しいのです。