母が誰かの養子になりました。
では、その母に子どもがいたらその子は養親の「孫」になるのでしょうか。「そりゃ、なるでしょう」…と思った方。今回はここに一つ「いつ?」を加えてみます。
まずは家族関係から
登場するのは幸太郎さんとハルさん夫婦。二人には正一さんという養子がいました。正一さんはその後、和子さんと結婚。二人の間には恵美子さんという娘が生まれます。その後、正一さんと和子さんは離婚しました。そしてさらに年月が経ってから―
正一さんの養母だったハルさんと元妻の和子さんが養子縁組をしました
つまり和子さんは元夫の養母の「養子」になったことになります。ちょっと関係が入り組んできました。

さてここで問題です。和子さんの実の娘・恵美子さんから見て母の養母であるハルさんは「おばあちゃん」なのでしょうか。
ここで「いつ?」を加えてみる
恵美子さんが生まれたのは和子さんがハルさんの養子になるよりずっと前のことでした。つまり、恵美子さんが生まれたとき和子さんとハルさんはまだ親子ではありません。
ここで関係してくるのが民法727条です。養子縁組をすると養子と養親、その血族との間に親族関係が生じます。ただし養子の側については「縁組後の血族」とされています。そのため母親が誰かの養子になったからといってそのときすでに生まれていた子まで自動的に養親の「孫」になるわけではありません。
今回の恵美子さんも、母・和子さんを通じてハルさんの「孫」になったわけではないということになります。なるほど。…と思ったらもう一つありました。
実はお父さんも養子でした
恵美子さんのお父さん・正一さん。実は正一さん自身が幼いころに幸太郎さんとハルさんの養子になっています。そして、その養子縁組よりあとに恵美子さんが生まれました。先ほどとは順番が逆です。
ハルさん
↓
養子・正一さん
↓
実子・恵美子さん
こちらは、養子縁組 → その後に子が誕生です。そのため、父・正一さんを通じて見るとハルさんと恵美子さんの間には祖母と孫にあたる親族関係が生じていました。
「なんだ。結局おばあちゃんだったのか」となりそうですがまだ続きがあります。その後、ハルさんと正一さんは養子離縁しているのです。
離縁すると「孫」はどうなる?
ここで関係するのが民法729条です。離縁によって終了する親族関係には養子本人だけでなく養子の直系卑属も含まれています。そのため、正一さんとハルさんが離縁したことで正一さんの実子である恵美子さんとハルさんとの親族関係も終了します。恵美子さん自身が離縁したわけではありません。それでも、父の養子離縁によってハルさんとの親族関係も変わるのです。
ここまでを整理すると、
- 母を通じては最初から「孫」にはならなかった
- 父を通じては「孫」になっていた
- ところが父が離縁したことでその関係も終了した
同じ登場人物なのに「いつ」を加えると関係がずいぶん違って見えてきます。
戸籍に「時間」を加えてみる
家族関係を図にすると親子は一本の線でつながります。とても分かりやすいのですが、それだけでは見えないものもあります。いつ生まれたのか。いつ養子になったのか。いつ離縁したのか。
今回も、関係だけを見れば「母の養母なら、おばあちゃんでしょう」と考えたくなります。ところが日付を追ってみると、母を通じた関係では子が先に生まれている。父を通じた関係では養子縁組のあとに子が生まれている。そして、その父は後に養子離縁している。
戸籍を見るとき「誰と誰が親子なのか」はもちろん大切ですが、ときにはそこに「それは、いつのこと?」を加えてみる。すると、一本の線だけでは分からなかった家族関係が見えてくることがあります。
※実際の事例をもとに、氏名・年代等を一部変更しています。










