死後事務委任~契約で死後の手続きをお願いできます

おひとりさま~独身者の他、配偶者や親族との死別・離別などによって同居する人がいない方を表す言葉として使われますが、相続人や親族が誰もいない人ばかりでなく、様々な理由によってこれらの人と疎遠になったり連絡が取れない状態の人も含めて「おひとりさま」と呼ばれることが多いようです。

高齢期にさしかかってくると、誰でも他人から様々な支援を受ける必要が生じる可能性が高くなっていきます。すぐ近くに支援してくれる家族がいれば安心ですが、おひとりさまの場合はそうはいきません。

身近な親族がいなければ、あらかじめ信頼できる第三者に支援をお願いしておくなどの準備が大切になってきます。親しい知人や民間の支援団体、弁護士・司法書士・行政書士などの士業に支援をお願いすることが考えられますが、早いうちからしっかりと対策をしておくことがやはり大切になってきます。

今回は、おひとりさまが事前にしっかりと準備をしておきたい相続(生前)対策として、事前に締結しておくことのできる契約のひとつ、「死後事務委任契約」について書いていきたいと思います。

死後事務委任契約とはどのような契約なのですか?

死後事務委任契約は、自分が亡くなった後の葬儀や埋葬、法要の他、役所への届け出、医療費や施設使用料の精算などの事務を第三者に依頼しておく契約のことをいいます。

通常、これらの死後の事務や手続きは家族や親族が行いますが、おひとりさまの場合ですと、死後のことを頼める親族がいないことも多いですから、事前に信頼できる第三者と死後事務委任契約という「契約」を締結しておき、自分の希望どおりの死後事務が行われるようにしておくのです。

おひとりさまの場合、自分の財産を誰にどのように引き継いでもらうかをきちんと決めておくために遺言を作成される方も多いでしょう。また、遺言に記した内容が確実に実現されるように遺言執行者を指定しておくのが一般的です。

しかしながら、遺言は「財産を誰に渡すか」という財産の承継の部分を決定するもので、その承継の実現を果たす役割を担うのが遺言執行者であって、葬儀を取り仕切ったり、医療費の精算をしたりといったような事務的な手続きは遺言執行者の権限には含まれません。

また、例えば、知人や介護ヘルパーさんなどに「私に何かあったときの支払いはこの通帳からお願いします」と口頭でお願いしていたとしても、死後の事務手続きは厳格な手続きですので、相続人以外の法的な権限のない人がこれらの手続を行うことは難しいでしょう。

そこで、おひとりさまや親族がいてもなるべく負担をかけたくないといった方の場合には、死後の様々な手続きをお願いできる死後事務委任契約を準備しておくと安心です。

具体的にどのようなことをお願いできるのですか?

死後事務委任の内容は自由に決めることができます。例えば、「葬儀の手配や納骨に関しては家族に取り計らってもらいたいけれど、家財の処分などまでは家族には迷惑かけたくない」という場合には、住居・遺品整理の部分のみを死後事務委任契約の内容にするということも可能です。

死後に必要な手続きは考えていた以上に多いものです。手続きができずに関係者に迷惑をかけることのないように、契約内容の中に網羅できるようにしておきましょう。

死後事務委任契約の対象となる手続きあれこれ

葬儀関係
  • 死亡診断書の手配
  • 火葬許可証の手配
  • 葬儀の手配
  • 納骨・埋葬 他
費用の支払い
  • 入院費用の支払い
  • 葬儀社への支払い
  • 埋葬費用の支払い
  • 未払い分や請求分の対応 他
住居関係・遺品整理
  • 家財処分
  • 住居の明け渡し
  • 電気・ガス・電話等の解約手続き 他
行政手続き
  • 健康保険証の返納
  • 年金受給停止手続き
  • 払いすぎた介護保険料等の返還請求 他
その他
  • クレジットカードの解約手続き
  • 関係親族への報告
  • 監督団体への業務完了報告 他

死後事務委任契約は、見守り契約、財産管理等委任契約、任意後見契約、身元保証契約、遺言の作成などとともに士業などの専門家に依頼するケースが多いです。

死後事務委任契約は、本人が死亡して初めて効力が発生する契約なので、死後事務委任契約だけを締結している場合だと、受任した側が生前の見守りや財産管理を行うことができないので、場合によっては本人の死亡を知ることができずに、依頼された死後事務委任を遂行できなくなってしまう可能性がでてくるからです。

おひとりさま対策として死後事務を委任したい場合には、見守り契約や任意後見契約を合わせて締結しておくことが推奨されています。