日本の戸籍の歴史は実は大変古いということで調べてみたところ、飛鳥時代の670年に作られた「庚午年籍(こうごねんじゃく)」、これが日本で最初につくられた、整った形での全国的な戸籍だそうです(そういえば、高校の日本史の授業で習ったような)。当時は、税の徴収などが主な目的だったようです。
現在のような身分関係を証明するための戸籍は、明治5年にその原型となるものが作られました。明治5年式戸籍、別名「壬申戸籍」と呼ばれるものです(明治5年の干支が「壬申(みずのえさる・じんしん)」だったためそう呼ばれました)。
明治5年当時、日本は明治維新後で早急な近代化を目指していた頃です。国民を厳格に管理し、租税制度や徴兵制度を確立する為にも戸籍制度の確立は重要な課題でした。そんな中で壬申戸籍が作られたわけですが、戸籍の様式は統一されていたわけではなかったようです。また、一部の地域では江戸時代の職業や身分に関する事柄が記されるなど、身分差別的な内容の記載もありました。
壬申戸籍はその記載内容から、身辺調査や被差別部落民かどうかの調査のための手段として利用しようとした事件などもあったため、壬申戸籍は厳重に封印・保管されることになり、現在では閲覧することが出来なくなっています。
明治5年式戸籍(壬申戸籍)の後、明治19年に新たに戸籍が作られました。現在でも取得可能な戸籍としては一番古い形式の戸籍となります。その後、戸籍法が改正されるたびに戸籍の書式が作り変えられていきました。
戸籍は時代と共にその書式を変化させながら現在のスタイルへとなっていったわけですが、今回は、明治19年式戸籍以降、実際のサンプルも紹介しながら、戸籍の書式の変化の歴史を見ていきたいと思います。
現在でも取得できる一番古い書式の戸籍!明治19年式戸籍
明治19年式戸籍は、明治19年10月16日から明治31年7月15日までの間につくられた戸籍です。当時の戸籍が作られる原因の一つに「家督相続」があります。戸主が死亡した場合に戸籍が作られるケースが代表的です。
下記のサンプル戸籍では前戸主が死亡し、相続によりこの戸籍が作られています。
戸主の欄が特徴的です!明治31年式戸籍
次の戸籍は明治31年7月16日から大正3年12月31日までの間に作られたもので明治31年式戸籍と呼ばれています。やはり、戸籍が作られる代表的な原因は家督相続ですが、明治31年式戸籍では「戸主となりたる原因および年月日欄」が新たに設けられました。この欄の中に家督相続の年月日が記載されています。
他にも、「前戸主との続柄」、「家族との続柄」などの欄も設けられ、明治19年式戸籍よりも項目が細かく分けられた書式になりました。
戸主の欄が広くとられてシンプルで読みやすい!大正4年式戸籍
こちらの戸籍は大正4年式戸籍です。大正4年1月1日から昭和22年12月31日までの間に作られた戸籍です。
大正4年式戸籍では、明治31年式戸籍で採用されていた「戸主となりたる原因および年月日欄」が廃止になり、家督相続に関する記載事項は戸主の事項欄に記載されています。「前戸主との続柄」の欄は引き続き設けられています。
戸主の事項欄のスペースがかなり広くとられているので、記載事項が多くなっても比較的読みやすいと思います。
家単位の戸籍から夫婦と子供の戸籍へ!昭和23年からの現行戸籍
これまで戸籍は戸主を中心とした「家」単位で編成されてきましたが、昭和23年の戸籍法改正(現在の戸籍法)により、戸籍は「1つの夫婦及びこれと氏を同じくする子」のみで編成されることとなりました。
たとえば、AとBが結婚してCが生まれた場合、この3名が1つの戸籍に記載されることになりますが、その後Cが大人になってDと結婚した場合、DはABCの戸籍に入ることはできません。新たにCとDの戸籍を作らなければならないことになります。
昭和23年1月1日以降に作られた現行戸籍では、戸主の制度が無くなったことにより、「戸主欄」、「前戸主欄」がなくなり、新たに「筆頭者氏名欄」が設けられました。
旧戸籍法の下では、戸主の死亡は戸籍を新たに作りかえる原因となっていましたが、新しい戸籍法では、筆頭者が死亡しても戸籍を作りかえることはありません。筆頭者が死亡してもその戸籍の筆頭者は死亡した人のままです。
現在はコンピュータ化により横書きの戸籍になりました
平成6年12月1日から戸籍のコンピュータ化が認められ、フォーマットが従来の縦書きから横書きに変更されました。
順次、各自治体でコンピュータ化のフォーマットへの切り替えが進み、現在では(ほぼ?)すべての現行戸籍が横書きになっています(数年前まで京都市などで縦書きの現行戸籍を見かけた記憶があるのですが現在は横書きになっていると思います。記憶が曖昧ですみません)ちなみに、縦書きの現行戸籍はコンピュータ化の元になっている戸籍として「改製原戸籍」となっています。
明治初期といえば、約150年も前になりますが、現在でも明治19年式戸籍は取得できるケースが多いです。
東京などでは保存期間が過ぎたことにより、すでに廃棄してしまっている自治体も多いのですが、地方の自治体などでは法律上保存期間が過ぎていても、廃棄せずにしっかり保存してくれているところが多いように感じます。
戸籍に関しては、掘り下げていくと色々と興味深いところが多いので、今後も引き続き記事を書いていきたいと思います。
縦書きの戸籍からコンピュータ化する際に写しかえられた事項は、原則として、コンピュータ化の時点で効力のある事項のみなので、その前の戸籍のときに婚姻、死亡等で除籍になった人や削除されてしまった事項などは新たに写しかえられていません。
そのため、そのような事項を調べるには、コンピューター化される前の縦書きの戸籍(改製原戸籍)を取得しなければなりません。