成年後見制度が変わります―でも、本当に変わるのは「後見」ではなく「終活」かもしれません

行政書士向けの成年後見制度改正に関する講演がありましたので受講いたしました。

成年後見制度は、認知症や障害などによって判断能力が十分でなくなった方を法律面から支える制度です。後見の話と聞くと「まだ自分には関係ない」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の講演で私が最も印象に残ったのは、改正法の条文ではありませんでした。

それは、「後見が終わっても、生活は終わらない」という講師の方の言葉です。

この言葉には、これからの終活を考えるうえで大切なヒントが詰まっているように感じました。

成年後見制度改正のポイント

※令和8年6月に改正法が成立しましたが、制度の施行は今後(公布日から2年6か月以内の政令指定日)に予定されています。実際の運用はこれからのお話になりますが、今回の改正では主に次のような方向性が示されています。

  • 後見・保佐を廃止し、補助制度へ一本化して対象を拡大へ
  • 必要がなくなった場合は後見を終了できる仕組みへ
  • 任意後見制度と補助制度を組み合わせて活用できる方向へ

つまり「一度始めたら一生続く制度」から「その人の状況に応じて利用する制度」へ変わるというところが今回の改正の大きな特徴です。

    後見制度の活用が終わっても、生活は続いていく

    成年後見制度は法律の制度です。しかし、私たちの日常は法律だけで成り立っているわけではありません。毎日の買い物、病院への通院、介護サービスの利用、家賃や光熱費の支払い、役所への届出。そうした生活は、後見制度が終わったからといって終わるわけではありません。だからこそ「後見の終了」と「生活支援の終了」は別の問題なのです。今回の講演ではこの視点がとても印象に残りました。

    生活の支援と法律の支援は違います

    ヘルパーさんや介護職の方は、日々の生活を支えてくださいます。一方で、銀行口座の解約、施設との契約、不動産の売却、行政手続きなど、法律行為を伴う場面では別の支援が必要になります。つまり、生活を支えることと、法律行為を支えることは、似ているようで役割が違うのです。成年後見制度や任意後見制度は、その「法律面」を支えるための制度と言えます。

    任意後見制度の価値がこれからさらに高まるかもしれません

    今回の改正では、任意後見制度と補助制度を組み合わせて利用できる方向性が示されています。これまでは、任意後見契約を結ぶと、「将来起こりそうなことをできるだけ幅広く代理権目録に盛り込んでおこう」という発想になりがちでした。しかし、今後は制度の運用次第では、任意後見には本人が信頼する人だからこそ任せたいことを、補助制度には法律上必要な場面だけを、という役割分担が進むかもしれません。

    任意後見制度が補助制度の活用終了後の戻り先として、より需要が高まっていく可能性も考えられます。

    もちろん、これはまだ施行前の段階での予想であり、実際の運用は、家庭裁判所や実務の積み重ねを見守る必要があります。それでも、「制度を組み合わせる」という発想は、これからの終活に新しい可能性をもたらしてくれるように感じます。

    終活も「点」ではなく「線」で考える時代へ

    これまでの終活は、元気なうちに準備をして、必要になったら後見制度を利用する。そんな一本の流れとして考えられることが多かったように思います。しかし、これからは、見守りがあり、必要に応じて任意後見が始まり、補助制度を利用し、状態が改善すれば補助制度を終え、再び見守りへ戻る。そんな「線」で支える終活へ変わっていくのかもしれません。

    その意味では、終活とは制度を選ぶことではなく、人生を支える仕組みを少しずつ整えていくことなのだと思います。

    もちろん制度を知ることは大切です。でも、本当に大切なのは、「自分はどんな暮らしを送りたいのか」ではないでしょうか。制度は、その暮らしを支えるための道具です。

    成年後見制度の改正は、法律の改正であると同時に、「これから誰に支えてもらい、どのように暮らしていきたいのか」を考えるきっかけなのかもしれません。

    施行までは、まだ時間があります。今は制度の細かな運用を気にするだけではなく、「自分だったら、どんな支え方を望むだろう」ということを、ゆっくり考えてみる時間にしていただければと思います。