こんなメールが届きました。
「梅雨の空はどんよりしていても、その雲の向こうには変わらず青空が広がっています。雨の日は景色を潤し、花や木々をいっそう鮮やかにしてくれる大切な時間。じめじめした空気に気分まで引っ張られそうになったら、お気に入りの音楽を流して、温かい飲み物を片手に小さな楽しみを見つけてみましょう」
続きます。
「今日の一歩は小さくても大丈夫。その積み重ねが、やがて晴れやかな未来へとつながっていきます」
最後は、
「雨上がりの虹を楽しみに、笑顔でこの季節を乗り越えていきましょう」
なかなか優しい文章です。ただ、読んでいて妙な感じがしました。このメールが届いた今は8月です。外に出れば少し歩いただけで汗が噴き出す暑さ。
そんな酷暑の中、突然「梅雨の空はどんよりしていても」と言われました。
詐欺メールでした
この文章の流れからリンクへ誘導するようになっていました。もちろん、リンクはクリックしていません。ただ、ちょっと気になって改めて文章を読み返してみました。
文章そのものはあまりおかしくありません。誤字だらけというわけでもない。妙な敬語が使われているわけでもない。「至急確認してください」と焦らせるわけでも「料金が未納です」と脅してくるわけでもありません。むしろ、こちらを励ましてくれています。
音楽を聴いて。温かい飲み物を飲んで。小さな楽しみを見つけて。今日の一歩を大切にして。最後には、雨上がりの虹まで見せてくれます。
まさか詐欺メールから、こんなに前向きな言葉をかけられるとは思いませんでした。
日本語は自然。でも、何かがおかしい
怪しいメールを見分けるとき「日本語が不自然ではないか」というのは、以前からよく言われるポイントの一つです。もちろん、それは一つの手掛かりになります。でも、今回のメールにはそれがあまり当てはまりませんでした。一文ずつ読めば普通に読めます。
では、何がおかしかったのか。考えてみると、文章そのものというより文章と現実の間に違和感がありました。
なぜ突然、私に梅雨の話をしているのだろう。なぜ、音楽や温かい飲み物の話からリンクを押すことになるのだろう。なぜ、8月に梅雨なのだろう。一つ一つはたいしたことではありません。でも、小さな「ん?」が重なると何かがおかしい。
きれいな文章だから安心とは限らない
今は、自然な文章を作ること自体が以前よりずっと簡単になりました。生成AIを使えば読みやすくて、感じがよくて、前向きな文章を作ることもできます。そうなると「日本語がおかしいから怪しい」という見分け方だけでは少し難しくなってくるのかもしれません。
文章そのものだけではなく「どうしてこのメールが私に届いたんだろう」「どうしてこの話からこのリンクにつながるんだろう」とその周りまで眺めてみる。そんな読み方も必要になってきたように思います。
日常の中で「なんだか変だな」と思ったときにすぐ先へ進まない。リンクを押す前にちょっと立ち止まる。よく分からなければ誰かに見てもらう。そんな小さなことも自分の暮らしを守ることにつながります。
詐欺の手口はこれからも変わっていくでしょう。文章ももっと自然になっていくのかもしれません。自分が感じた小さな違和感をすぐに打ち消してしまわないことも大切です。
小さな「ん?」をそのままにしない。このメールが届いた今は8月。梅雨はとっくに明けています。










