以前、この終活だよりで、子どものいないご夫婦の相続についてご紹介しました。
亡くなった奥様の兄弟姉妹を戸籍で確認し、住所を調べ、お一人ずつお手紙を送り、遺産分割のお手伝いをした事例です。
実は、あのご相談には、記事では触れなかったもう一つのエピソードがありました。
ご主人が最初の相談のときに、こんなお話をされました。
「市役所へ相談に行ったら『死後離婚という方法がありますよ』と言われたんです。それをすれば、相続の手続きも何とかなるのでしょうか」
「死後離婚」という言葉
皆さんは「死後離婚」という言葉をご存じでしょうか。
正式には「姻族関係終了届」といい、配偶者が亡くなったあとに配偶者側の親族との親族関係を終了させるための制度です。
でも、相続とは別の制度です。
今回のご主人が困っていたのは「義理の兄弟姉妹との関係を終わらせたい」ということではなく「相続人である奥様の兄弟姉妹が、どこに住んでいるのか分からない」「連絡先が分からない」ということだったのです。
子どものいないご夫婦では、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になることがあります。そのため、相続手続きを進めるには、その方々と連絡を取り、遺産分割の話し合いを行う必要があります。姻族関係終了届を提出しても、この相続手続きがなくなるわけではありません。
本当に必要だったこと
そこで行ったのは、戸籍を集めて相続人を確認し、住所を調べ、お一人ずつ事情を書いたお手紙をお送りすることでした。時間はかかりましたが、皆さまにご協力いただき、無事に遺産分割を終えることができました。
この問題を解決したのは「死後離婚」という制度ではありません。ひとつひとつ必要な手続きを整理し、順番に進めていったことでした。
もしかすると…
実際に市役所でどのような説明があったのかは、私には分かりません。相続についての説明とあわせて姻族関係終了届という制度も紹介されていたのかもしれませんし「死後離婚」という印象的な言葉だけがご主人の記憶に強く残っていたのかもしれません。
ただ「死後離婚」という言葉だけを聞くと、相続にも関係する制度のように感じてしまう方がいても不思議ではないと思います。
制度にはそれぞれ役割があります。名前の印象だけで判断すると、かえって不安が大きくなってしまうこともあります。
制度の名前から考えるよりも、困っていることから考えたほうがスムーズに解決へたどり着くことがあります。今回のご相談は、そのことを改めて教えてくれた出来事でした。








「死後離婚(姻族関係終了届)」は、亡くなった配偶者の親族との法律上の親族関係を終了させる制度です。たとえば、
このような場合に、一つの選択肢となることがあります。
一方で、この届出を提出しても、亡くなった配偶者の遺産を相続する権利がなくなるわけではありません。相続と姻族関係終了届は、それぞれ目的の異なる制度です。