先日、電車に乗っていると「公益社団法人世田谷区シルバー人材センター」の車内広告が目に入りました。 普段ならそのまま眺めて終わっていたと思いますが、ふと一人の方を思い出しました。
そういえば、山下さんも登録していたな、と。
山下さん(仮名)は、少し前にお会いした方です。お話をしているなかで、今はシルバー人材センターにも登録していると聞きました。
そのときは「そうなんですね」と何気なく聞いていたように思いますが、電車内の広告を眺めていたらそのときのやりとりがふっと思い出されました。そして、こんなことを考えます。
仕事を辞めると、何がなくなるのだろうか
まず思いつくのは収入です。老後資金や年金のことを考えれば、少しでも収入があることはもちろん大切です。でも、なくなるものはそれだけではありません。
朝、決まった時間に起きる。出かける場所がある。今日やることがある。人と顔を合わせる。誰かから「お願いします」と頼まれる。そして、自分にもまだできることがあると思える。
現役で働いているときには、どれも当たり前すぎてあまり意識することはありません。でも仕事を辞めたときに給料だけでなく、こうしたものまでなくなるとしたら仕事というものも少し違って見えてきます。
シルバー人材センターというと「高齢者が仕事をするところ」というイメージがあります。もちろん働いて収入を得る場所でもあります。でも、それだけではないのかもしれません。
仕事があるから出かける。出かければ人と会う。人と会えば話をする。仕事を頼まれれば自分の役割ができる。そこには金額だけでは測れないものもありそうです。
山下さんは長くエンジニアとして働いてきた方でした。現役時代と同じように働き続けるわけではない。かといって仕事を辞めたその日から社会との接点まで全部なくしてしまう必要もない。
その間くらいの働き方があってもいい
もちろん「生活の張り」をつくるものは仕事だけではありません。趣味でもいい。地域の活動でもいい。習い事やボランティアでもいい。定期的に友人と会うことだって立派な予定です。何をするかは人それぞれでしょう。ただ「明日はこれがある」と思えるものが暮らしの中にあることは案外大切なのかもしれません。
老後について考えるとき「お金」のことはよく話題になります。老後資金はいくら必要なのか。年金はいくらもらえるのか。何歳まで働いたほうがいいのか。どれも大切なことですが、それと同じくらい「仕事を辞めたあと自分は毎日何をしているのだろう」ということもときどき考えてみてもよいのではないでしょうか。
終活というと、遺言や相続、介護やお墓など「いつか」に備える話を思い浮かべる方が多いと思います。けれど、その「いつか」が来るまでにはまだ毎日の暮らしがあります。
朝起きて何をするのか。どこへ行くのか。誰と話すのか。自分にはどんな役割があるのか。そんなことを考えておくのも老後への一つの準備なのかもしれません。
何を遺すかを考えることも終活。その日まで何をして暮らすかを考えることも終活。終活は実は生活そのものの話なのかもしれません。











シルバー人材センターは、高齢者がこれまでの経験や能力を生かしながら地域で働く機会を得るための仕組みです。
原則として60歳以上の方が対象で、一般的な就職とは異なり、センターが地域の家庭や企業、公共団体などから仕事を受けて会員に提供する形などで仕事をします。仕事内容は、清掃、施設管理、家事援助、植木の手入れ、事務などさまざまです。
世田谷区にも「公益社団法人世田谷区シルバー人材センター」があり、仕事の紹介だけでなく地域での活動や会員同士の交流なども行われています。
「まだ少し働きたい」「これまでの経験を生かしたい」「地域とのつながりを持っていたい」そんなときの選択肢の一つとして、知っておいてもよい仕組みかもしれません。
※入会条件や仕事の内容、働き方などは地域のシルバー人材センターによって異なります。詳しくはお住まいの地域のシルバー人材センターでご確認ください。