遺言の方式は民法によって決められていて、その方式に従わない遺言は無効です。民法960条には「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」とハッキリ書かれています。また、遺言ですることのできる事項もキッチリと決められています。つまり、民法で、「遺言ですることができるとされている行為」だけが遺言として有効なのです。
遺言の様式や内容についても民法に規定があるのですが、それは、遺言が本物であるか偽物であるか、また、有効なのか無効なのかによって相続人同士の争いに繋がることも少なくないため、このようなトラブルをできるだけ無くす意味でも、条文で細かく規定されています。
そして、民法に規定されている遺言の方式の中で、実務上、特によく利用されている方式が公正証書遺言です。公正証書遺言は、遺言者の手元のほかに、公証役場にも保管されるので紛失の恐れがないし、公証人という法律の専門家が作成に関与するため、法律的にもしっかりとチェックが行き届いているので、いざ遺言内容を実現するときに「実は、要件を満たしていないため無効でした」なんてことはまず起こりません。というわけで、今回は、遺言者の遺思の実現するための長所をしっかりと兼ね備えている公正証書遺言の特徴をご紹介したいと思います。
公正証書遺言はここが優秀!こんな長所(メリット)があります
先ほど述べたように、公正証書遺言のならではの特徴はなんといっても、作成に公証人が関わってくれて、公証役場で保管してくれることです。では、それらを含めて公正証書遺言の特徴・長所(メリット)をご紹介しましょう。
- 遺言の原本が公証役場に保管されるので、遺言者が誤って遺言を破棄したり紛失した場合、さらには、遺言者の死後に相続人が遺言を隠してしまった場合でも、公証人が遺言者の死亡を知れば、遺言内容を実現できる。
- 遺言の作成に公証人(法律のプロ中のプロです)の手が加わっているから、遺言が無効になる事由が発生する可能性が極めて(限りなく)低い。
- 公正証書遺言は公証人の他に、証人2人以上の面前で作成される。そのため「本人が自分の意思で作成した」という信憑性が高い。
- 信憑性が高いがゆえに、遺言の執行時に家庭裁判所の検認を受ける必要がない。
検認とは?
相続人に対して遺言書の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言の形状や加除、訂正の状態、日付、署名など遺言書の現状を確認して、証拠を保全する(要するに偽造や変造を防止する)家庭裁判所の手続です。なお、検認はあくまで証拠保全の手続なので、遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。検認を受けたからといって「裁判所が遺言を有効と判断した」ということではありません。
ちょっぴりデメリットも。公正証書遺言の作成費用はそれなりにかかります
信憑性が高く、検認も不要で、相続開始後ただちに遺言を執行できるという大きなメリットがある一方で、そうはいっても公証役場・公証人が関わりますからそれなりの費用はかかります。作成費用がどのくらいかかるのかは遺言者にとって気になるところですから、作成費用の負担があることはデメリットの部分といえるかもしれません。
参考までに公証人に支払う手数料(報酬)についても説明していますので、気になる方はこちらの記事もご覧ください。
その他に考えられるのは、公正証書遺言の作成には「証人2人以上の立会いが必要」という点です。証人が立ち会っているということは、「公証人の他に、少なくとも2人の他人に遺言の内容を知られてしまう」ということです。公証人以外の証人にまで遺言の内容を知られてしまうということに抵抗感がある方にとってはデメリットと感じる点かもしれません。
公正証書遺言は、費用の面など若干のデメリットはありますが、最も重要な「遺言を迅速・確実に執行できる」という観点からみると、大変優秀な方式の遺言であるといえますね。