戸籍の中では時間が前後することがあります―「死亡とみなされる日」が残す不思議な記録

今回の戸籍も、「あれ?」と手が止まるような内容が記載されている戸籍です。

「死亡とみなされる日 平成21年12月31日」とあり、その少し下には「失踪宣告の裁判確定日 平成27年7月24日」と書かれています。

裁判が確定したのは平成27年。それなのに、法律上亡くなったことになる日は平成21年。時間が前後しているように見えます。

もちろん、戸籍の間違いではありません。これは「失踪宣告」という制度によるものです。

「死亡した日」ではなく「死亡とみなされる日」

失踪宣告とは、長期間にわたり行方が分からず、生死も確認できない人について、家庭裁判所が法律上「死亡したもの」と扱う制度です。

一般的な失踪(普通失踪)では、原則として7年間生死不明の状態が続くことなどが要件となります。

民法 第30条 1項 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。

もし、この制度がなければ、相続や不動産の名義変更など、多くの法律関係が前へ進みません。そのため、一定の日を基準として「死亡したもの」とみなし、手続きを進められるようにしています。

戸籍に記載されるのも「死亡年月日」ではなく「死亡とみなされる日」という少し独特な表現です。

今回の戸籍から分かるのは「失踪宣告があったこと」そして「死亡とみなされる日」だけです。

なぜ消息が分からなくなったのか。事故だったのか。災害だったのか。それとも別の事情があったのか。戸籍には何も書かれていません。一枚の戸籍の向こうで、どのような時間が流れていたのだろうと想像するしかありません。

時間を整理する制度

戸籍というと「生まれた日」「結婚した日」「亡くなった日」などが記録されているものという印象が強くなりますが、実際に戸籍を読み続けているとそれだけではないことに気づきます。

今回の「失踪宣告」では、裁判が確定した日よりも前の日が「死亡とみなされる日」として記載されていました。時間が逆戻りしたわけではありません。

法律によって、社会や家族の生活を前へ進めるために「この日を基準にしましょう」と整理された結果なのです。戸籍は、その時間の流れを静かに記録していました。

戸籍には、人生の出来事が詳しく書かれているわけではありません。そこに並ぶのは、日付と短い記載だけですが、その一行一行を丁寧に読んでいると「なぜ、このような書き方になっているのだろう」という疑問から、法律の仕組みや時代背景に出会うことがあります。