「まだ元気だから大丈夫です」
終活相談のなかでよく耳にする言葉です。確かに、今は買い物もできるし、お金の管理もできる。病院にも一人で行ける。だから、まだ後見は必要ない。そう考える方は少なくありません。
でも、任意後見制度は「まだ元気だからこそ」考える制度なのです。
認知症や病気によって判断能力が低下すると、自分で契約を結ぶことが難しくなります。「誰に財産管理をお願いしたいか」「誰に病院や施設との手続きを任せたいか」「どんなふうに生活を支えてほしいか」など、本来なら自分で決めたいことも、その時点では自分で決められないかもしれません。そのためにあるのが任意後見制度です。判断能力が十分あるうちに、自分で信頼できる人を選び、将来に備えて契約を結んでおく制度です。
お任せする相手を、自分で選べるという安心
法定後見制度では家庭裁判所が後見人を選任します。一方、任意後見制度では自分自身で後見人を選ぶことができます。家族でもよいでしょう。長年付き合いのある知人でも構いません。弁護士や司法書士などの専門家を選ぶ方もいます。
「もしものとき、この人なら安心して任せられる」の思いを自分の意思で形にできるのが任意後見制度です。
契約したその日から始まる制度ではありません
任意後見契約を結んでもすぐに後見が始まるわけではありません。契約は「将来への約束」です。
本人の判断能力が低下して、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときに初めて任意後見が始まります。つまり、契約を結んでから実際に制度が動き始めるまでには、何年もの期間が空くことも珍しくありません。
その空白の時間を支える「見守り」
ここで大切になるのが「見守り」です。任意後見契約を結んだあとも、定期的に電話をしたり、お会いしたりして生活の様子を確認する「見守り契約」を一緒に結ぶケースがあります。
「最近、物忘れが増えてきましたね」「そろそろ支援を始めたほうが安心かもしれません」など、変化に気づける人がいることで、必要なタイミングで任意後見を始めることができます。
任意後見制度は、公正証書だけで成り立つ制度ではありません。人とのつながりがあってこそ生きる制度なのです。「一人で頑張る準備」ではありません。
困ったときに頼れる人をつくっておくこと。
任意後見制度は、財産管理の制度であると同時に「誰に未来を託すか」を自分で決められる制度でもあります。
終活とは「もしものとき」の準備です。それは悲しい話ではありません。未来の自分に「大丈夫だよ」と伝えてあげる準備でもあります。任意後見制度は、そのための一つの方法です。自分で決められる今、その時間があるうちに一度考えてみる価値のある制度ではないでしょうか。











任意後見制度と法定後見制度は似ているようで、大きな違いがあります。
どちらが良い・悪いではありません。大きな違いは「自分で選べるかどうか」と「いつ準備するか」です。